2007-01-01から1年間の記事一覧

世界を動かしているのは「悪意」ではない

振り返ってみると、「陰謀論」 の誤りと、その危険性について、ずいぶんとごちゃごちゃ書きまくってしまった。なにしろ、クリスマスについて書き出した記事まで、最後は 「陰謀論」 批判という結論になってしまったくらいだ。「陰謀論」 にはまりやすいのは…

ホワイトクリスマスはすでに死語である

今日は久しぶりにいい天気だった。空にはほとんど雲がなく、歩いていると汗ばんできて、とうとうセーターも脱いでしまった。「ホワイトクリスマス」 どころか、「インディアンサマー ・ クリスマス」 という言葉のほうがぴったりするような一日だった。 クリ…

「陰謀論」 と 「未開の思考」

アルカイダによる9.11の同時テロ事件が起きてから、すでに6年以上が経過している。この事件がきっかけとなって、ブッシュ政権が 「反テロ戦争」 を旗印にし、アフガニスタンとイラクでの軍事行動を始めたことはむろん言うまでもない。ところで、この事件につ…

無敵の人々

タイトルをつけてから、しばし考えた。この言葉は、いったいどこからどのようにして、わが脳髄にいたり来たったのであろうか。しばしの沈思黙考をへて浮かんだのは、かのドストエフスキーの 『貧しき人々』と、10数年前になくなったイタリアの作家アルベルト…

自明の「正しさ」を疑うことの意味

現代の日本は平和を旨とする民主主義国家なのだそうだ。したがって、平和や民主主義といった価値の正当さは、しばしば自明のものとして語られる。しかし、そのような価値あるいは理念の正しさは、本当に自明のものなのだろうか。実際、今の世の中にも、その…

ピーターかペーターかペテロかピョートルか

ヨーロッパ系の人名というものは、聖書などの古い書物に由来するものが多い。したがって、一見違うように見える名前も、元をたどれば同じということが多く、同じ人の名前が、その国の言葉によって様々に変化して呼ばれていたりする。たとえば、カフカの 『審…

今年も「憂国忌」の季節がきた

数日前に、大陸から打ち上げられた木枯らし一号が列島を吹き抜けたそうで、季節は秋を駆け抜け冬に向けて一気に加速しつつあるようだ。今年はどうも暑い夏と寒い冬の二極に極端に分化しそうな感じであるが、世界的な石油価格高騰の影響で、灯油の値段も早く…

映画「マトリックス」と主観性の哲学

秋の日といっても、「ヴィオロンのため息」 も 「鐘の音」 も聞こえてこない。聞こえてくるのは、せいぜい近くでやっているマンション工事のとんてんいう音と、ときおりやってくる灯油売りの 「たきびだ、たきびだ」ぐらいである。 昨日はやや雲が多くて、空…

ノーマン・メイラー死亡

昨日、ノーマン・メイラーが死んだそうである。 生年は1923年で、享年84歳だったそうだから、とりあえず大往生ということになるだろう。日本の作家でいうと、三島由紀夫や安倍公房とほぼ同世代であり、つまり第二次世界大戦という、20世紀最大の事件の荒波を…

民主党はどこへいく

仕事でバタバタしていた間に、世の中ではいろんなことが起きていたようだ。鳩山弟の友だちの友だちがアルカイダであることや、彼が田中角栄の私設秘書時代にペンタゴンから毎日のようにただ飯をおごって貰っていたことが判明し、日本シリーズでは落合率いる…

佐賀で起きたこと

佐賀県でこんな事件が起きている。 知的障害の男性が警察官に取り押さえられて急死した問題で、県授産施設協議会(村上三 代代表、42施設)は19日、県警に真相解明と障害者への理解を求める文書を提出した。県内では過去にも障害者の安全が脅かされる類…

秋は駆け足でやってきた

彼岸を過ぎても真夏日が続いていたが、いつの間にやら秋である。夜半を過ぎて丑三つごろに空を見ると、巨大なオリオンが燦然と輝いている。神話によれば、神をおそれぬ不逞の輩であったオリオンは、怒った神の放ったサソリによって殺され、いらい星になって…

親の子離れ・子の親離れ

子供の才能に気づいた親が、それを伸ばしてやることは悪いことではないだろう。しかし、そのことと、親が自分の果たせなかった夢や挫折した希望を子供に投影して、その人生をがんじがらめに縛り付けることとは、全然別のことである。 テレビ局や一般の世間は…

ミャンマー情勢について

ミャンマーのことについては、たいしたことは知らない。しかし、仏教の僧侶が大挙してデモ行進をするということは、容易ならざる事態のように思われる。ミャンマーの仏教は、僧個人の悟りのための修行を重視するいわゆる「小乗仏教」であって、これまで僧侶…

不思議の国 「日本」

フロイトの 『トーテムとタブー』 を読んでいたら、たまたまフレーザーの 『金枝篇』 の 「タブー」 についての章からの、次のような引用を見つけた。 太古の王国は専制主義であり、したがってその人民は、ただその支配者のためにのみ存在するという概念は、…

秋は本当に来るのだろうか

今日も暑い。連日、最高気温が30度を超える真夏日が続いていて、あちこちで最も遅い真夏日の記録を更新しているのだそうだ。アスファルトの道路には、くっきりとした影が灼きついている。 それでも、さすがに7, 8月に比べれば太陽は低くなっており、おかげで…

政治家に「国家観」は必要ではあるけれど

本当かどうかは分からないが、中国の古典 『史記』 によれば、聖帝 尭の時代に許由という人がいたそうだ。 この許由、非常に優秀なひとだったそうで、それを聞いた尭は彼に天下を譲ろうとした。ところが、許由は富も名誉も思いのままというせっかくの話を断…

あらあら、まあまあ、おやおや

首相が辞めるそうだ。あらあら、まあまあ、おやおや、といった感じである。 しかも、その理由というのが、アメリカとのお約束が果たせないということと、民主党の小沢党首に党首会談を断られということだそうで、二度びっくりである。もし、本当にインド洋で…

「食べず嫌い」についての考察

仕事の合間の暇つぶしに、「広辞苑」で「食べず嫌い」という項目を引いてみたらこんなふうに書いてあった。 食べないで、わけもなく嫌うこと。また、その人。くわずぎらい。 まあ、あらためて調べるほどのことも書いてなかったので、ちょっとがっかり。 それ…

フォイエルバッハによる宗教批判の論理

ドイツにとって宗教の批判は本質的には済んでいるのであり、そして宗教の批判はあらゆる批判の前提である。 これは、マルクスが25歳で書いた 『ヘーゲル法哲学批判序説』 の冒頭の一文である。ここで彼が言っている 「宗教の批判」 とは、いうまでもなくヘー…

吉本隆明 『カール・マルクス』

マルクスの思想については、一般に 『ドイツ・イデオロギー』 あたりを境にして、初期マルクスと中期・後期マルクスと分けられることが多い。初期マルクスの著作には 『経哲手稿』 などがあり、後期マルクスの代表作はいうまでもなく 『資本論』 である。 伝…

追加

丸山真男の門下であった橋川文三の『歴史と体験』 に所収された、 「井上光晴 『虚構のクレーン』 をめぐって」 という短文に、次のような文章が紹介されている。 小林先生。すみませぬ。折角のご好意に背いて来て、まことに申し訳ありませぬ。実はあなたか…

たんなる雑感

朝青龍がうつ状態にあるというニュースで思い出したのは、アルプスの話をすることをクララの家庭教師のロッテンマイヤーさんに禁じられて、夢遊病を発症したハイジの話。アニメが最初に放送されたのは1974年だそうだから、たぶん子供が小さいときに再放送で…

的外れかもしれないけれど

たぶん20年ぐらい前のことだと思う。正確な言葉は忘れてしまったし、どこで書いていたのかも覚えてないが、吉本隆明が、資本主義社会というのは、歴史の無意識が生んだ最高傑作だ、というようなことを言ったことがある。とんちかんな左翼評論家の中には、こ…

内田樹 「格差社会って何だろう」

今日もお天道様はたいへんお元気、現役時代の中畑のように絶好調である。よりによって、こんな暑いさなかに、内田さんは 「格差社会」 という現在もっともホットな問題に手を突っ込んだものだから、なにやらたいへんな騒ぎになっている。なんとブックマーク…

「無知の知」 あるいは 「無能の能」

今日はとにかく暑かった。天気図を見ると、日本列島にはほとんど等圧線がない。太平洋高気圧が、列島の上にどっかりと腰を据えてしまっていて、まさに酷暑、猛暑、狂乱の真夏日である。おまけにテレビをつけると、「自民党は改革を約束します」などというコ…

安倍政権の教訓 (ちょっと気が早いけども)

安倍政権の教訓などというと、いささか気が早いという感がしないでもない。まだ選挙期間は一週間も残っているわけだが、与党の敗北という状況はたぶん避けられないだろう。ただし、与党が大敗したとしても、安倍政権が退陣するかどうかははっきりしない。問…

人生というものは、一寸先は闇というか、どこへ通じるのかも分からずあちらこちらへと枝分かれしている真っ暗なトンネルの中を手探りで歩いているようなもので、おまけにときどき天井から石が落ちてきたり、足元に深い穴が開いていたりする。人間万事塞翁が…

草莽とは

「草莽」 という言葉が一部ではやりのようである。ちょこちょこっと検索してみると、草莽崛起-PRIDE OF JAPAN だの、「草莽崛起の会」 だの、なんともアナクロな匂いのする言葉がぞろぞろと出てくる。たとえば、草莽崛起-PRIDE OF JAPAN というサイトでは、…

「しょうがない」 の論理

「原爆を落とされて長崎は本当に無数の人が悲惨な目にあったが、あれで戦争が終わったんだという頭の整理で今、しょうがないなと思っている」 という内容の、久間防衛大臣の発言があちこちで波紋を呼んでいる。 当初、「詳しいことは聞いていないが、米国の…