ヘーゲル「精神現象学」から

長谷川宏訳のヘーゲル精神現象学』から

 おのれの信念にしたがうのは、むろん、権威に身をゆだねるよりはましなことだ。が、権威にもとづく判断をおのれの信念にもとづく判断に変えたからといって、内容が変わるとは限らないし、あやまり転じて真理になるとも限らない。思い込みと偏見の体系にとらわれているかぎり、他人の権威によろうと、おのれの信念にもとづこうと、真理からは遠く、二つの違いはといえば、おのれの信念にもとづくほうが虚栄心が満たされやすいといった程度のことである。

なるほど

「私は権威など絶対に信じない」とか言いながら、降圧剤を服用するとガンになるとか、降圧剤治療はユダヤの陰謀だなどという、わけの分からぬ人の言葉とかはすぐに信じ込む人も同じである。
とりあえず、世間に広く認知されている常識というものには、それなりの根拠というものがあるはずだから、むやみと疑ってもしょうがないだろう。ましてや、その結果、それよりよっぽど怪しい言説に捉われてしまっては何にもなるまいに。


追記:2008/2/16/8:17リンク先の人に見つかったらしい。
世の中、やっぱり悪いことはできぬものである。
それはともかく、こちらとしては、とくにあらためて反論すべきほどのことはなにもない。
ただ、一言指摘しておくとすれば、安易な反権威主義は、しばしば非合理的な反知性主義と結びつきやすいということだろう。それは、歴史によって証明済みのことでもある。
「権威」というものは、ただ罵倒したり破り捨てたりといったことで否定できるものではない。
「権威」を乗り越えるために必要なものは理性であって、たんなる感情的反発ではないということだ。