野原燐さんへの質問

http://d.hatena.ne.jp/noharra/20090323

イラク戦争にあたってマスコミから垂れ流された多量かつ多様なプロパガンダを考えるとき*1、数十年に渡るイスラエル支持を維持するためには膨大なプロパガンダ努力がおしみなくつぎこまれたと考えることは妥当な推測です。


「ドイツの「過去の克服」問題について、つまり研究者や被害者たちがホロコーストの記憶化のためにいかに努力してきたか、」は、プロパガンダとは区別することができます。


ホロコーストは、他の同様の事件と同じように語ることを許されぬ「唯一無比」のものだ」と語る言説は、プロパガンダである、と判断してもよいのではないでしょうか?


上の記事につけたブクマコメントと、記事へのコメント

ブクマのページは下
http://b.hatena.ne.jp/entry/http://d.hatena.ne.jp/noharra/20090323%23p1

野原さん
ブクマのコメントを転記しておきます。

あなたは「唯一無比」という言葉をどう理解してる。虐殺はスターリンポルポトもやった。そして、それぞれが「他の同様の事件と同じように語ることを許されぬ」のではないのか。すべて固有であり比較は不要


 ガザや西岸地区でのイスラエルの蛮行を非難するのに、ユダヤ人が過去に被った差別や虐殺の歴史を引き合いに出す必要はありません。当たり前のことですが、ユダヤ人がどういう歴史を背負っていようといまいと、今彼らが行っていることは非難されるべきことです。

 言い換えるならば、その二つを比較する必要など、そもそもないということです。パレスチナでの蛮行が、量的質的に「ホロコースト」より劣るからといって批判できないわけでもありません。ですから、それが「ホロコースト」に匹敵するか否かというような議論は無意味です。

 歴史上のどのような虐殺にも、それぞれの固有性があります。それは、なによりも、そこでの死者そのものが固有の存在だからです。その証言を伝える人々にとって、その事件と記憶は、他と比べることなどできない「唯一無比」なものです。それは、親族や友人を亡くした者にとって、その記憶がつねに「唯一無比」なものであることと同じことです。

 もし、「ホロコーストだけが、他の同様の事件と同じように語ることを許されぬものだ」と主張して、ユダヤ人のみに限定されたホロコーストを「特権化」し、それによって、イスラエルという国の現在の行動への批判を封じようとする者がいるなら、それは批判されるべきでしょう。

 しかし、あなたがプロパガンダである、と判断してもよいのではないでしょうか」と、ひとからげにしているホロコーストは、他の同様の事件と同じように語ることを許されぬ「唯一無比」のものだ」と語る言説、というものはすべてそうなのでしょうか。また、そもそもそういう意味なのでしょうか。


むろん、イスラエルアメリカによる「プロパガンダ」は、様々な形であるでしょう。それは、どこの国でも同じことです。とりわけ、国際的に厄介な問題を抱えている国が、国際社会に向けてなんらかの「プロパガンダ」行為を直接・間接に行うことは、あなたの言うように「妥当な推測」といっていいでしょう。しかし、問題はもっと具体的に立てる必要があります。そのような一般論は、特定の問題についてなんら明らかにするものではありません。

また、わざわざ歴史を紐解かずとも、当人にはその意図がなかったにもかかわらず、結果的に「プロパガンダ」として作用してしまうことなど、世界にはいくらでもあります。人間の行為というものは、しばしば当初の当人の意図を超えた「影響」や「結果」をもたらすものです。それは、人間が置かれている世界の構造そのものによる必然と言ってもいいでしょう。人間の善き意思や意図は、けっしてその「影響」や「結果」の正しさを保証するものではなく、また人はおのれの行為について、その「善意」だけで免責されるものではないとしても、この二つは区別されるべきものです。

例をあげるなら、世界中の多くの人が見る映画やTVドラマなどは、いくら製作者にそのような意思がなくとも、結果的に一定の「プロパガンダ」の役割をすることは十分に想像できます。それが、たとえ「善意」の製作者によって、可能な限り、十分な準備や目配りがなされたものであっても、現にまだ血が流れ続けている問題になんらかの形で係わっているとき、そこになんらの歪みも一方への偏りもないと想像することは、そもそもきわめて困難なことです。

たとえば、「ホロコースト」の「唯一無比」性を主張している人は、みな今のイスラエルの蛮行を容認し、支持しているのでしょうか。それは、イコールで結ばれるものなのでしょうか。あなたの言葉は、そういった点についても、いささか慎重な考察に欠けた粗雑なものであり、単純過ぎるように思えます。

しかし、あなたの考えていることは、たぶんまだ結論が出てはいないのでしょう。質問したいことや気になる点は、ほかにもいくつかありますが、とりあえず今はこれだけ。


http://d.hatena.ne.jp/hokusyu/20090324/p1