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ネット上の「怪人」たち


あんなこととか、こんなこととか。
桜の季節なので、三島由紀夫の『仮面の告白』の一節を引用。

 花は不思議と媚めかしく見えた。花にとっての衣装ともいうべき紅白の幕や茶店の賑わいや花見の群集や風船屋や風車売りがどこにもいないので、常盤木のあいだにほしいままに咲いている桜などは、花の裸体を見る思いをさせた。自然の無償の奉仕、自然の無益な贅沢、それがこの春ほど妖しいまでに美しく見えたためしはなかった。


 私は自然が地上を再び征服してゆくのではないかという不快な疑惑を持った。だってこの春の花の花やかさはただごとではないのであった。菜の花の黄も、若草のみどりも、桜の幹のみずみずしい黒さも、その梢にのしかかる鬱陶しい花の天蓋も、なにか私の目には悪意を帯びた色彩のあざやかさと映った。それはいわば色彩の火事だった。